ノマド生活完全ガイド|海外で自分の仕事を持って暮らすための準備と流れ
パソコンとインターネットがあれば、住む国を自分で選んで仕事を続けられる時代になりました。会社員としてリモートで働く人、フリーランスとして海外の取引先と仕事をする人、自分の会社を持って事業を動かす人など、形はさまざまです。
一方で、海外で働きながら暮らすには、収入の確保、ビザ、お金の受け取り方、保険、税金など、日本で働く時にはなかった準備が必要になります。
このガイドでは、海外で自分の仕事を持って暮らすための全体の流れを、準備・住む場所・働き方・暮らし方・道具の順にまとめています。タイに住む場合の具体的な情報もあわせてご紹介します。
目次
ノマドとは
ノマド(デジタルノマド)とは、特定のオフィスに通わず、インターネットを使って仕事をしながら、住む場所を自分で選んで暮らす働き方です。
数か月ごとに国を移動する人もいれば、1つの国に拠点を置いて長く住む人もいます。共通しているのは、仕事が場所に縛られていないことと、そのための準備を自分で整える必要があることです。
[1] 海外で働く前の準備
1-1. 海外でも続けられる収入を確保する
海外で暮らし始めてから仕事を探すより、出発の前に、オンラインで続けられる収入を確保しておく方が安定します。今の勤め先でリモート勤務ができるか、フリーランスとして海外からも受けられる仕事があるかを、まず確認します。
- 会社員のリモートワーク:勤め先が海外からの勤務を認めているか、社会保険や税金の扱いがどうなるかを確認します。
- フリーランス:取引先がオンラインで完結する仕事か、時差があっても対応できるかを確認します。
- 自分の事業:顧客との契約、請求、入金の流れを、海外からでも回せる形にしておきます。
1-2. 働き方の器を考える(個人か、会社か)
海外の取引先と仕事をする場合、個人として受けるか、会社を作って受けるかで、請求・入金・税金の扱いが変わります。海外で事業を続ける人の中には、米国でLLC(有限責任会社)を作り、会社として取引をする人もいます。どの形がよいかは、住む国と収入の受け取り方で変わるため、出発前に整理しておくと安心です。
1-3. 資金の計画
海外での生活を始めるには、初期の費用と、収入が減った時に備える貯えが必要です。
- 初期の費用:航空券、最初の住居の費用(敷金を含む)、ビザの申請費用、保険料など
- 生活費:住む国と都市、生活の水準で大きく変わります。現地の家賃・食費・交通費を調べて、月の予算を決めます。
- 貯え:仕事が途切れた時や、急な帰国・医療の費用に備え、数か月分の生活費を別に確保しておくと安心です。
タイで暮らす場合の生活費の考え方は、タイでの生活費と予算計画ガイドでまとめています。日本との物価の違いは、タイと日本の物価の比較で項目ごとに比べています。
1-4. 持ち物
移動が多い暮らしでは、持ち物は必要なものに絞ります。
- 仕事の道具:パソコン、充電器、変換プラグ、モバイルバッテリー
- 書類:パスポート、ビザの書類、保険の証書、クレジットカード(複数枚)。紙と電子の両方で控えを持っておきます。
- 通信:SIMフリーのスマートフォン、eSIMを使える端末
- 健康:常備薬と、処方薬がある場合は英文の説明
[2] どこに住むかを決める
準備の次は、どの国・どの都市に住むかを決めます。ビザ、生活費、インターネットの環境、治安と医療を合わせて考えます。
2-1. ビザ(在留資格)
海外に長く滞在する場合、どの在留資格(ビザ)で滞在するかは、最初に確認する点です。
近年は、海外の取引先から収入を得る人を対象にした「デジタルノマドビザ」を設ける国が増えています。観光での滞在より長く住める一方で、収入の証明や、取引先との契約の証明が求められることが多いです。
- タイ:DTVビザ(海外からの収入でリモートワークをする人などが対象)。対象となる人や必要な書類はDTVビザの完全ガイド、申請の代行はDTVビザ申請代行をご覧ください。
- ポルトガル・スペインなど:デジタルノマド向けの在留資格があります。
制度は変わることが多いため、申請の前に、各国の大使館や移民局の公式情報を確認してください。なお、観光の滞在では、その国で働くことは原則として認められていません。
タイで長く暮らす方法は、DTVのほかにも、リタイアメントビザやThailand Privilegeなどがあります。それぞれの違いは長期滞在できる6種類のビザで比べています。どのビザが合うか判断がつかない場合は、タイ移住の個別相談で状況をうかがいます。
2-2. 生活費:収入に合わせて選ぶ
暮らしを続けるには、収入と支出のつり合う国・都市を選ぶことが大切です。比べる時は、次の費用を見ます。
- 家賃:都市の中心か郊外か、住まいの水準で大きく変わります。
- 食費:自炊か外食かで変わります。
- 交通費:公共交通や配車アプリの料金
- 通信費:インターネット回線とSIMの料金
- 医療・保険:私立病院の費用と、医療保険の保険料
必要な費用は、求める生活の水準によって変わります。
2-3. インターネットの環境
オンラインで仕事をする人にとって、安定したインターネットは仕事の前提です。住む場所を選ぶ前に、次の点を確認します。
- 住まいの回線:固定回線の速度と安定性。内見の時に速度を測るか、事前に確認します。
- モバイル回線:現地のSIMやeSIMの通信品質と料金
- 予備の手段:停電や回線の不具合に備え、モバイル回線を予備にできるようにしておきます。
- 作業の場所:近くにコワーキングスペースや、作業できるカフェがあるか
特にインターネットの環境は、住み始めてから変えるのが難しいため、事前に確認しておくことが大切です。
2-4. 治安と医療
新しい土地で落ち着いて暮らすには、治安と医療の環境も確認しておきます。
- 治安:外務省の海外安全情報で、国と地域の状況を確認します。住む地域は、昼と夜の両方の様子を見て決めると安心です。
- 医療:近くに英語や日本語が通じる私立病院があるか、医療費の水準はどうかを確認します。
- 保険:一般的な旅行保険では、長期の滞在に足りないことがあります。ノマド向け医療保険の比較も参考にしてください。タイに住む場合の医療保険はタイ医療保険の完全ガイドでまとめています。
2-5. 日本との時差
日本の取引先やチームと仕事をする場合、時差の少ない東南アジアは仕事を合わせやすい地域です。ヨーロッパや中南米に住む場合は、打ち合わせの時間をどう合わせるかを考えておきます。
2-6. タイで暮らしながら働く場合
タイでは、バンコク・シラチャ・チェンマイなど、都市によって生活費・日本語の環境・暮らしの雰囲気が大きく違います。地域ごとの特徴は、ISJの記事で比べています。
[3] 海外での働き方
住む場所が決まったら、海外で仕事を続けるための環境と習慣を整えます。
3-1. 仕事をする場所
まず決めるのは、どこで仕事をするかです。主な選択肢は3つあります。
コワーキングスペース
向いている方:安定した回線と静かな環境で、毎日決まった時間に仕事をしたい方。
選ぶ時の確認点:立地、料金、回線の速度、会議用の個室、モニターの有無、利用できる時間
カフェ
利点:気軽に使え、費用を抑えられます。
注意点:回線が不安定なこと、電源がないこと、長時間の利用が難しいことがあります。オンライン会議には向かない場合が多いです。フリーWi-Fiを使う時は、VPNで通信を守ると安心です。
自宅
利点:自分のペースで仕事ができ、費用は家賃だけで済みます。
注意点:生活と仕事の区切りがつきにくくなります。住まいを選ぶ時に、回線の速度と作業用の机を確認しておきます。
家具付きの住まい(サービスアパート)を仕事場にする
長く滞在する場合は、家具や家電がそろい、清掃などのサービスが付いた「サービスアパート」に住み、そのまま仕事場にする方法もあります。物件によっては、ラウンジなどの共用スペースがあるところもあります。インターネットの速度や作業できる場所の有無は物件ごとに違うため、契約の前に確認してください。
たとえばタイのシラチャには、日本人の入居を想定したサービスアパートが多くあります。部屋の設備や契約の条件は、シラチャの不動産会社キングフィッシャー(ISJの提携先)のサイトで紹介されています。
3-2. 時差への対応
日本や他の国の取引先・チームと仕事をする場合、時差は避けられません。
- 連絡の時間を決める:やり取りできる時間帯を、取引先と共有しておきます。
- 非同期の連絡を基本にする:チャットや共有の文書で進め、会議は必要な時に絞ります。
- 予定の表示:カレンダーに複数の時間帯を表示しておくと、予定の取り違えを防げます。
時差があることで、相手が休んでいる間に作業を進められるという利点もあります。
3-3. 現地の情報と人のつながり
暮らしと仕事を続けるには、現地の情報を得られる場を持っておくと安心です。
- コワーキングスペースの集まりや、在住者のオンラインのコミュニティ
- 住む国の日本人会や、同業の人の集まり
- ビザや税金など手続きの相談先(現地の専門家や代行会社)
補足
この章では、海外という環境で働くための点を中心に説明しました。オンラインでのタスク管理や連絡の方法など、場所に関係なく必要なリモートワークの基本は、この記事では扱っていません。
次の章では、住まい・ビザ・税金・お金・健康など、海外での暮らしの基盤を整える方法をまとめます。
[4] 海外での暮らし方
仕事の形が整っても、暮らしの基盤が不安定では、海外での生活は続きません。住まい・ビザ・税金・お金・健康を、順に整えます。
4-1. 住まい
住まいは、滞在の長さで選び方が変わります。
- 短期(数週間〜数か月):ホテルやサービスアパートメント。家具と回線がそろっていて、すぐに仕事を始められます。
- 中長期(半年以上):現地の賃貸物件。費用を抑えられる一方、契約の期間や敷金の条件を確認する必要があります。
- 確認すること:回線の速度、作業できる机、周辺の治安、病院やスーパーまでの距離
タイで住まいを探す場合は、タイでのお住まい探しをご覧ください。シラチャで具体的な物件を探す場合は、シラチャの不動産会社キングフィッシャーのサイトで、サービスアパートやコンドミニアムを条件で探せます(キングフィッシャーの物件検索)。
滞在の長さと予算に合わせて、住まいの形を選んでください。
4-3. 税金と社会保険
海外で暮らしながら働く場合、税金と社会保険は、日本と住む国の両方の扱いを確認する必要があります。
- 日本の住民票:1年以上海外に住む予定で海外転出届を出すと、日本の住民税・国民健康保険・国民年金の扱いが変わります。詳しくは、住んでいる市区町村で確認してください。
- 日本の所得税:日本の非居住者になると、日本で課税されるのは、原則として日本国内で生じた所得に限られます。
- 住む国の税金:住む国の制度によって決まります。どの所得が、いつ課税されるかは国ごとに違います。
- 会社を持つ場合:日本に住んでいる間に海外の会社を持つと、日本の税制(外国子会社合算税制)の対象になることがあります。
タイに住む方の税金は、ISJの税務相談でご相談いただけます。タイでの確定申告や納税者番号(TIN)の取得は、タイ個人確定申告の代行・納税者番号の取得サポートをご覧ください。
税金と社会保険の扱いは、出国の前に確認しておくと、後の手続きがスムーズです。
4-4. お金の受け取りと管理
海外で暮らすと、日本円を現地の通貨に替えたり、海外の取引先から報酬を受け取ったりする場面が増えます。
- 海外送金:銀行の海外送金は、手数料と為替の上乗せが大きくなることがあります。Wiseのような送金サービスを使うと、費用を抑えやすくなります。
- 報酬の受け取り:Wiseでは、米ドルなど複数の通貨の口座情報を持てるため、海外の取引先からの報酬を受け取れます。会社として受け取る場合は、ビジネス口座があります。
- 現地の銀行口座:長く住む場合は、家賃や公共料金の支払いのために、現地の口座があると便利です。開設の条件は、ビザの種類によって違います。タイの銀行口座はタイの銀行口座開設サポートでご案内しています。
- カード:海外で使えるクレジットカードを複数枚持っておくと、1枚が使えない時にも困りません。
Wiseの使い方は、次の記事で詳しく説明しています。
➡️ WISE 海外送金|完全ガイド / ➡️ Wiseで海外から送金を受け取る方法
4-5. 健康と医療保険
- 医療保険:一般的な旅行保険は、観光や短期の滞在を前提にしています。長期の滞在や、国をまたいだ生活には、ノマド向けの医療保険や、住む国の医療保険を検討します。
- 病院:住む地域の私立病院と、英語や日本語で受診できるかを確認しておきます。
- 日々の体調:気候や食事の変化で体調を崩しやすいため、無理のない生活の習慣を作っておきます。
保険の選び方と各社の違いは、次の記事にまとめています。
4-6. 言葉と文化
現地の言葉を少しでも話せると、買い物や手続き、近所付き合いがずっと楽になります。英語が通じる場面が多い国でも、あいさつや数字などの基本の言葉を覚えておくと役立ちます。また、宗教や習慣の違いを知っておくと、思わぬ行き違いを避けられます。
4-7. 孤独への備え
一人で働き、暮らす時間が長くなると、孤独を感じることがあります。コワーキングスペースや在住者のコミュニティ、趣味の集まりなど、人と会う場を意識して作っておくと、暮らしが安定します。日本の家族や友人と、定期的に連絡を取る習慣も大切です。
[5] 海外での暮らしと仕事を支える道具
海外での暮らしと仕事を支える道具とサービスを、用途ごとにまとめます。ISJで紹介しているサービスには、公式サイトへのリンクを付けています。
5-1. 移動と通信
- 航空券の比較:Skyscanner、Google Flights などで、複数の航空会社の料金を比べられます。
- 宿の予約:Booking.com、Agoda、Airbnb など。中長期の滞在では、キッチン付きの物件も選択肢になります。
- 地図:Google マップは、オフライン用の地図を保存しておくと、回線がない場所でも使えます。
- 運転免許:長く住んで車やバイクを使う場合は、その国の運転免許が必要になることがあります。タイの場合はタイの運転免許の取得サポートをご覧ください。
- SIM・eSIM:到着してすぐに通信したい場合や、複数の国を移動する場合は、オンラインで購入できるeSIMが便利です。
5-2. お金
- Wise:海外送金と、複数の通貨の口座を持てるサービスです。海外の取引先からの報酬の受け取りにも使えます(Wise公式サイト)。
- クレジットカード:海外での利用に強いカードを、国際ブランドを分けて複数枚持っておくと安心です。
5-3. 通信の安全(VPN)
- カフェや空港のフリーWi-Fiで仕事をする場合は、VPNで通信を暗号化しておくと安心です。日本の一部のサービスを海外から使う場合にも役立ちます。
- 代表的なサービス:ExpressVPN(速度と安定性)、Surfshark(接続できる台数に制限なし)。違いは海外で働く人のVPNの選び方で比べています。
5-4. 医療保険
- 長期の滞在や多拠点の生活では、ノマド向けの医療保険を検討します(ノマド向け医療保険の比較)。
補足:仕事の効率を上げる道具
タスク管理(Asana、Trello、Notion など)、連絡(Slack、Zoom、Google Meet など)、文書の作成と共有(Google Workspace、Microsoft 365 など)、時間の記録(Toggl Track、Clockify など)のような、一般的なリモートワークの道具も、海外で働く時の生産性を支えます。
道具とサービスは、自分の働き方と住む国に合うものを選んでください。
[6] 海外で事業を持って暮らす形
海外で自分の仕事を持って暮らす形は、大きく3つに分けられます。どの形が合うかは、今の仕事の内容、収入の受け取り方、住む国によって変わります。
形1:日本の会社のリモート勤務を続ける
会社に所属したまま、海外から仕事をする形です。勤め先が海外からの勤務を認めているか、社会保険や税金をどう扱うかを、出発の前に会社と確認しておく必要があります。住む国によっては、海外の会社に勤めてリモートで働く人が使えるビザがあります(タイの場合はDTVビザ)。
形2:フリーランスとして海外の取引先の仕事を受ける
会社に所属せず、自分で仕事を受けて報酬を得る形です。取引先からの報酬をどの口座で受け取るか、請求と入金の流れを、海外にいても回せる形にしておきます。海外の取引先からの報酬は、複数の通貨の口座を持てるサービスで受け取る方法があります(Wiseで海外から受け取る方法)。
形3:海外に法人を作り、会社として取引する
フリーランスとしての仕事が増えてきた段階で、法人を作って会社として取引する形です。海外に住む人の中には、米国のLLC(有限責任会社)を使う人もいます。法人の設立地と住む国の組み合わせによって、税金の扱いが大きく変わるため、作る前に、住む国と日本での扱いを確認しておく必要があります。日本に住んでいる間に海外の会社を持つと、日本の税制(外国子会社合算税制)の対象になる場合もあります。
海外で暮らす人がつまずきやすい点
- ビザ:書類の不備、更新の期限の勘違い、滞在できる日数の超過
- お金:予算の見込みの甘さ、急な出費、送金の遅れ
- 仕事:取引先との契約の終了、収入の偏り
- 健康:慣れない環境での体調不良、保険の補償の不足
- 盗難・詐欺:パソコンやスマートフォンの盗難、オンラインの詐欺
どれも、事前の準備と、困った時の相談先を持っておくことで、影響を小さくできます。
まとめ
海外で自分の仕事を持って暮らすには、出発前に、収入・ビザ・お金の受け取り方・保険・税金を整えておくことが大切です。
- 準備:海外でも続けられる収入を確保し、個人か会社かの形を考える
- 住む場所:ビザ、生活費、回線、治安と医療、時差で選ぶ
- 働き方:仕事の場所と、時差への対応を決める
- 暮らし:住まい、ビザの管理、税金、お金、健康を整える
タイでの暮らし方やビザのうち、どれが自分に合うか判断がつかない場合は、タイ移住の個別相談をご利用ください。
このガイドで紹介した各テーマは、ノマド・働き方のカテゴリーの記事で詳しく説明しています。



